毎日の暮らしを支えているのは、実は”健康”という見えない土台です。どんなに仕事を頑張っても、家族との時間を大切にしても、体が元気でなければ心から楽しむことはできません。けれど、健康のありがたさは、体調を崩したときに初めて気づくもの。だからこそ、自分の体の状態を知るために『健診』や『検診』があります。健診の目的は、ただ病気を見つけることではなく、”これからも安心して暮らしていくための確認”です。今回は、健診のゴールをもう一度見つめ直しながら、早期発見の大切さ、そして”もしもの時”に備えるために今できることを一緒に考えていきましょう。
健診・検診を受けることのゴールを明らかにする

健診や検診を受ける目的は、『異常がないかを確認すること』だけではありません。本当のゴールは、自分の体の変化を知り、これからの暮らしを整えるための指針を得ることです。たとえば、血圧や血糖値コレステロールなどが少しずつ上がっているのであれば『生活習慣を見直すサイン』です。健診結果は”合否”ではなく、”次の行動を決める手掛かり”なのです。
また。結果が『要再検査』『要精密検査』となったときにこそ大切なのは、”怖い”で止まらず、”次にどう動くか”を決めること。多くの方がここで足を止めてしまいますが、早期発見・早期対応によって、生活の質を保ちながら病気を防ぐケースも少なくないのです。健診・検診は、未来の不安を減らし、自分の体を味方につけるためのツール。『結果を見る日』ではなく、『これからの自分と向き合う日』と考えてみることで、受ける意味がぐっと明確になります。
『行かない』という選択肢がもったいない
健診やがん検診の結果で『要精密』を書かれていても、実際に再検査を受けない方は少なくありません。理由はさまざまです。『忙しくて後回しにしてしまう』『怖くて行けない』『どうせ大丈夫だと思いたい・・』。けれど、それではせっかく受けた検診の意味が半減してしまします。
がん検診は、”がんを見つけるため”というより、”早期に見つけて助かるため”の検査です。早期発見ができれば、治療の選択肢は広がり、生活の質を保ちながら回復を目指すことができます。もし再検査を受けずに放置してしまえば、そのチャンスを自ら手放してしまうことになります。健診や検診を受ける前に、『自分は何を知りたいのか』『見つかったらどうしたいのか』を少しだけ考えてみてください。”怖い”という感覚は自然なことですが、行動しない理由にはしないでほしいのです。臨床検査技師として多くの健診者さんのデータに向き合ってきた経験から言えるのは、『早く見つかれば、間に合うことが本当に多い』ということ。再検査は、あなたの体が発してくれた小さなサインを確かめる大切なチャンスです。どうかその機会を逃さないでください。
再検査になった時の対応

健診結果を見て『要再検査』『要精密検査』をいう文字が目に入ると、どうしても『何か悪い病気かもしれない』と不安になります。けれど、再検査=病気とは限りません。健診は『異常を見逃さないこと』を最優先にしているため、少しでも疑わしい結果が出た時点で再検査の対象とされます。つまり、『もう一度確かめましょう』というのが再検査の本来の意味なのです。
再検査の案内が届いたら、まず案内文をよく読むことが大切です。どの項目で、どんな理由で再検査になったのか、施設によっては具体的に書かれています。不明な点は、健診施設や主治医に問い合わせることで、不安を早めに解消できます。
また、再検査を受ける医療機関は、
・健診施設が指定する提携病院
・かかりつけのクリニック
どちらでも構いませんが、消化器や乳腺、糖尿病など専門医にかかるのが安心です。ただし、検査結果の用紙や紹介状を持参することを忘れずに。検査データがあれば、医師がより的確に判断できます。再検査の結果、異常がなければ『経過観察』や「次回の健診でチェック』という形で終わることも多いです。もし治療が必要な場合でも、早期発見であれば日常生活を大きく変えずに済むケースがほとんどです。こういう時に信頼できるかかりつけ医がいると、誰にも相談できない悩みを相談できて心強いのです。
がんが疑われた時—ひとりで抱え込まないで

検査の結果『がんの疑いがあります』と言われた瞬間、頭の中が真っ白になってしまうでしょう。恐怖や不安、『まさか自分が』という思いが押し寄せ、冷静に考えることが難しくなるのは当然のことです。けれどもそんな時こそ、ひとりで抱え込まないでほしいと思います。医療の現場では、再検査や精密検査を経て『がんではなかった』という結果になることも少なくありません。まずは落ち着いて、指示された検査を受け、専門医を受診して確かな説明を受けてください。
また、結果を聞いた時のショックや混乱をひとりで受け止めるのはとても辛いことです。医師の説明が難しく感じるのも自然なこと。だからこそ、家族や信頼できる友人など、誰かを頼る勇気を持ってほしいのです。そばに誰かがいるだけで、聞き逃したことを補ってくれたり、冷静な判断で助けてくれることもあります。医療は、ひとりで立ち向かうものではありません。不安を分かち合いながら、確かな情報と支えをもとに、前に進めることを願っています。
もし、がんになったら—早く気づけることの意味
『もし、がんになったら・・』そう考えるだけで、不安になる方も多いと思います。けれど、がんは今や特別な病気ではなく誰にでも起こりうる身近なものです。医療の現場にいると、『早く見つかったから助かった』『治療を続けながら仕事も続けられた』という声も耳にします。一方で、症状が出てから受診され、『もっと早く検診を受けていれば』『もっと早く病院に行かれていれば』と悔やまれる方も少なくありません。
早期に見つかるかどうかで、その後の人生は大きく変わります。治療の選択肢が広がるだけでなく、心や体への負担を軽くできる。そして何より、”いつもの生活を取り戻せる可能性”が高くなります。健診や検診はその『早く気づくためのチャンス』。病気を見つけるためのものではなく、自分の暮らしと未来を守るための行動です。ここでは、早期発見がどんな意味を持つのか、そして健診がその第一歩になる理由を一緒に考えていきましょう。
医療の現場では、同じ”がん”という診断でも、見つかったタイミングによってその後の経過がまったく異なります。早期の段階で見つかった方は、治療が短期間で済み、仕事や家事を続けながら生活を立て直していくことができます。一方で、進行してから見つかった場合、治療の選択肢が限られ、体力的・精神的な負担が大きくなることもあります。
定期的にデータを追うことで、自分の”いつもと違う”を早くつかむことができます。がんは症状が出てから気づくことが多い病気ですが、検査の結果にはその前段階の変化が現れます。医療者はそこに目を向け、いち早く次の検査や治療につなげる役割を担っています。
健診で異常が見つかることは決して悪いことではありません。むしろ、それは『早く気づける』チャンス。早期発見は、命を守るだけではなく、日常を守り、これからの人生を自分のペースで歩むための力になります。
がんと告げられたとき、誰もが強い不安を感じます。これからどうしたらいいのか、治療費はいくらかかるのか、仕事は続けられるのか・・多くの人がさまざまな不安を抱えるものです。けれども早く気づけたことは、決して不幸なことではありません。治療の選択肢が広がり、回復の可能性も高くなります。そして何より、支援を受けながら前を向ける時間があることです。
がんの治療には、公的な制度やサポートが数多くあります。医療費が高額になった場合に自己負担が抑えられる『高額療養費制度』、治療と仕事の両立を支える『傷病手当金』や『就労支援』、がん向き合う人を支える『がん相談支援センター』なども全国に設置されています。こうした制度を早めに知り、利用することは、自分や家族の負担を軽くする大切な一歩です。
がんは、ひとりで抱え込むにはあまりにも大きな出来事です。医療の力、公的な制度、そして周囲の支えを上手に頼りながら、少しずつ前へ進んでいけますように。
健診・検診は”未来の自分”へのプレゼント

健診や検診は、『今の自分』を知るためのものでもあり、『これからの自分』を守るためのものでもあります。年齢を重ねると、体の変化は少しずつ静かに訪れます。だからこそ、気づける力—”早く気づく仕組み”を自分の生活に取り入れておくことが、将来の安心につながるのです。
健診を受けるゴールは、病気を見つけることではありません。自分の体を大切に扱うきっかけをつくり、『どんな人生を生きたいか』を考える時間でもあります。もし結果に不安を感じることがあっても、それは”悪い知らせ”ではなく、”これから整えていくサイン”かもしれません。そのサインに早く気づくことこそ、健診の最大の意味です。
健康は、人生の土台です。仕事も、趣味も、家族との時間も、その上に積み重ねていくもの。健診はその土台を点検しながら、『これからも自分らしく生きていくための習慣』をして続けてほしいと思います。
まとめ
健診は、特別な人だけのものではありません。誰にとっても、人生の途中で一度立ち止まり、”今の自分”を確かめるための通過点のようなものです。忙しい毎日の中では、つい後回しになってしまうこともあるでしょう。でも、自分の体を知ることは、将来の安心にも、日々の暮らしの質にもつながります。もし結果に不安があっても、それは『もっと自分を大切にしていこう』というサイン。怖がらず、焦らず、医療の力を上手に頼ってください。
面倒だと思うかもしれませんが、年に一度は健診を受けて、できるだけ早く気づけるようにして欲しいと思います。そして何よりも—自分の体を大切に扱ってあげてください。それは自分の人生を丁寧に生きることにつながります。私たち医療者は、検査の先にある”あなたのこれから”を守りたいと思っています。健診を受けるその一歩が未来の笑顔につながりますように。
最後までお読みくださり有難うございました
