臨床検査技師の現場にも、いよいよ”Z世代”が本格的に入職してきました。『最近の新人は仕事に対する考え方が違う』『叱るとすぐに萎縮してしまう』・・そう感じたことはありませんか?実はその背景には、Z世代特有の価値観や働き方のスタイルがあります。昭和世代が当たり前だと思ってきた指導法では、なかなかうまく響かないことも少なくありません。
そこで本記事では、
・Z世代の新人臨床検査技師が持つ価値観や特徴
・昭和世代との”あるある”な違い
・そして教育のヒントとなる『ほめる しかる 伝える』の新しい形
を具体的に紹介します。世代の違いを理解し、指導法を少しアップデートするだけで、新人教育はぐっとスムーズになります。
Z世代の基本像
Z世代とは、1990年代後半から2010年前後に生まれた世代を指します。いわゆる『デジタルネイティブ』の代表であり、子供の頃からスマホやインターネットに触れて育った世代です。
特徴としては、
効率性重視:情報は短くわかりやすく。動画やチャットで学ぶのが当たり前
納得感を大事にする:なぜ必要なのか、目的が明確でないと行動しにくい
上下関係より対話を好む:フラットなコミニュケーションを望み、心理的安全性を重視
社会的意義に敏感:自分の仕事が患者や社会にどう役立つのかを意識して働く
と言う価値観が挙げられます。
つまりZ世代の新人臨床検査技師は、言われた通りやるのではなく、理由を理解し、納得した上で取り組むことで力を発揮するタイプだと言えます。
なぜ今Z世代の価値観を知ることが重要なのか
臨床検査技師の仕事は、安全性と正確性が最優先。だからこそ、新人教育では『先輩のやり方を見て覚える』『失敗しながら慣れていく』と言うスタイルが長く続いてきました。しかし、Z世代にはその方法が必ずしも合いません。
もし世代の特徴を理解せずに昭和の指導を続けると、
・意欲をなくして早期退職につながる
・指導の効果が出ず、独り立ちが遅れる
・双方にストレスが溜まり、職場の雰囲気が悪くなる
といったリスクが高まります。
逆に、Z世代の価値観に合わせて指導を工夫すれば、理解力・吸収力が高く、チームの新しい風を運んでくれる存在になり得ます。だからこそ今、世代の違いを知り、それに応じた教育アプローチが必要なのです。
昭和世代との違い(新人あるある比較)
マニュアルの形が違う
昭和世代あるある | 厚い紙のマニュアルを最初から順番に読むのが当たり前 |
Z世代の感覚 | QRコードで短い動画や図解を見て理解する方が効率的 |
コメント | 指導する側が『昔はこれで覚えた』と思っても、Z世代はデジタルツールで瞬時に理解したい傾向があります。 |
仕事観・残業への姿勢が違う
昭和世代あるある | 残業してでも仕事をやり切るのが美徳 |
Z世代の感覚 | 効率的に終わらせてプライベートも大事にしたい |
コメント | 単純な長時間勤務=頑張りの評価ではなく、成果・効率・安全性を重視する指導が必要です |
コミニュケーションの取り方が違う
昭和世代あるある | 『背中を見て覚えろ』『聞かずにやれ』 |
Z世代の感覚 | 『なぜそれをやるのか理由を知りたい』『対話形式でフィードバックを受けたい』 |
コメント | Z世代は”意味のある指示”で納得して動きます。背景を説明せずにただ指示するだけでは、混乱や抵抗を招きやすいです |
学習方法の違い
昭和世代あるある | 紙の資料を読み込んで覚える |
Z世代の感覚 | スマホや動画で短時間でポイントを確認したい |
コメント | 新人教育では、紙資料だけでなく、動画やチェックリストなどのデジタルツールも組み合わせると効果的です |
ここまでのまとめ
・昭和世代が『昔はこうだった』と思う指導法では、Z世代新人は戸惑いやストレスを感じやすい
・小さな違いに気づき、指導方法を少し変えるだけで、理解力・吸収力が格段にアップ
教育のヒントは『ほめる しかる 伝える』
ほめる=プロセスや改善を具体的に承認する
【ポイント】
・結果だけでなく、取り組みのプロセスや改善点に着目して褒める
・小さな変化を見逃さず言語化すると、承認欲求が満たされやすい
【具体例】
NG | 『よく頑張ったね』(漠然としていて響かない) |
OK | 今日の血液塗抹標本きれいに引けてて見やすかったよ。昨日よりも格段に改善されているね |
OK | ダブルチェックの手順を自分で確認して行ったのは素晴らしい |
【解説】
Z世代は”何が良かったのか”を明確に示すと納得感が高まり、次回も同じ行動を繰り返すようになります。
しかる=人格ではなく行動を指摘し、改善策をセットで示す
【具体例】
NG | なんでこんなミスするの! |
OK | 今回のラベルの取り違えは、この段階でダブルチェックを入れると防げるよ |
OK | 手順を一部変更すると、作業時間も短縮できるよ |
【解説】
Z世代は”行動の理由と改善策”が明確でないと萎縮してしまうことがあります。叱る時も『次にどうすればいいか』をセットで伝えることで前向きに受け止めてもらえます。
伝える=『なぜ必要か』を短く、具体的に伝える
【ポイント】
・ルールや手順を伝えるためだけでは理解しにくい
・『なぜやるのか』『何に影響するのか』を簡潔に伝える
【具体例】
NG | これはルールだから守って |
OK | この確認作業は患者さんの診断精度に直結するから、スピードより正確性を優先してほしい |
OK | この手順は検体汚染を防ぐために必要。丁寧にやることで結果の信頼性が高まる |
【解説】
Z世代は”納得感”が行動の動機になります。背景や意味を伝えるだけで、主体的に取り組む姿勢が引き出せます。
まとめのポイント
・ほめる:プロセスや改善を具体的に言語化
・しかる:行動にフォーカスし、改善策をセットで示す
・伝える:背景や意味を短く具体的に伝える
この3つを意識するだけで、Z世代新人の吸収力・成長スピードはぐっと上がります。
Z世代教育で避けたいNG指導3選
Z世代の新人臨床検査技師を指導する時、無意識に『昔はこうだった』と思いながら声をかけてしまうことがあります。でもその一言が、実は新人のやる気を削いでいることも・・
ここではよくあるNG指導3選を、改善のヒントと一緒に整理します。
【NG指導①】
理由を言わずに『とにかくやって!』

これはマニュアル通りにやって
理由はいいから



なぜ必要なのかわからないなぁ・・
【改善のヒント】
・『この手順は患者さんの安全につながる』など、意味や背景を短く伝える
・行動の理由を知ることで、納得して取り組める
【NG指導②】
結果だけを評価して『できて当たり前』



それくらい普通にできるよね



頑張ったことを見てくれてない・・
【改善のヒント】
・プロセスや改善点を具体的に褒める
・『昨日より検体処理が丁寧になったね』と成長の過程を言語化する
【NG指導③】
感情的に叱って『なぜそんなミスしたの』



なんでこんな簡単なこともできないの!



私には向いていないのかも・・
【改善のヒント】
・人格ではなく行動にフォーカス
・『ラベル取り違えは、この時にダブルチェックを入れると防げるよ』と改善策とセットで伝える
明日から実践できる教育3ステップ
Step1『ほめる』 小さな成功を認める
【ポイント】
・Z世代は『承認』に敏感→ まず『できた部分』を言葉にして伝える
・例)『昨日の採決の声かけ、患者さんがリラックスしてたよ』
【効果】
モチベーションが維持され、自分から次の学びに進む
Step2『しかる』 人格ではなく行動を指摘する
【ポイント】
・『ダメ出し』ではなく、『改善提案』に切り替える
・『ラベルの確認忘れてしまったね。次は声に出してダブルチェックしてみよう』
【効果】
責められた感覚ではなく、『次にどうすればいいか』が明確になる
Step3『伝える』 背景や意図もセットで説明
・手順だけでなく『なぜそれが必要か』をセットで説明する
・例)『この検査は正しい順番で処理しないと結果に影響が出るの。だから順番が大切なんだよ』
【効果】
Z世代は『納得感』で動くため、理解度と定着率が高まる
『ほめる』でやる気を引き出し
『しかる』で行動改善を導き
『伝える』で納得感を与える
まとめ
教育は、『新人を変えること』ではなく、『私たち自身の関わり方を少し変えること』からはじまります。ほめて・しかって・伝える・・たった3つのステップでも、伝え方を工夫するだけで新人の反応は驚くほど変わります。
『自分の時代はこうだった』ではなく、『今の時代にあった教え方をしてみよう』と考えることこそ、先輩としての成長でもあります。明日からの一歩を変えて見ませんか?それが、新人のやる気を育て、職場全体を明るくするきっかけになります。
最後までお読みくださりありがとうございます